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愛媛大学 理工学研究科

研究概要

液状化メカニズム           

   目 次 
1.薄い砂層の液状化,河川堤防の堤体内液状化
2.Pre-shearingが液状化強度に及ぼす影響
3.2018年インドネシア・スラウェシ地震で発生した大規模液状化流動現象

4.関連発表論文リスト

 液状化の研究と実務では,土の非排水状態を前提として行われてきた。一方,実際の地盤では,たとえ数十秒間という短い地震動の間でも多かれ少なかれ地盤内の水は移動し,完全なる非排水条件が満足されているとは限らない。この間隙水の移動は興味深い現象を引き起こす。


薄い砂層の液状化,河川堤防の堤体内液状化

 2011年東北地方太平洋沖地震によりおよそ2000箇所以上で河川堤防が被災し,大半の箇所における被災の主たる原因が堤体内の比較的薄い砂層の液状化であることが明らかになっている。これまでの河川堤防の耐震対策は基礎地盤の液状化による被害を対象として行われてきたが,今後は堤体内液状化も対象として耐震対策を行う必要があり,そのためには耐震点検法として堤体内の液状化判定を行う必要がある。
 東北地方の被災堤防および無被災堤防を対象に,現行の液状化判定法を用いて被災及び無被災堤防の液状化判定を行ったところ,過度に安全側の結果を与えることがわかった。その主たる原因が,薄い砂層では,液状化判定法で考慮されていない地震中の排水が影響していることであると考え,一連の遠心実験を元に地震中の排水の影響を考慮した液状化判定法を考案した。実験の結果,地盤の透水係数の増加と共に,液状化するに要する加振加速度,すなわち見かけの液状化強度が増加量を定量的に求め,この見かけの液状化強度と液状化するまでの排水による体積ひずみの関係が,不飽和砂における同様の関係とほぼ同様のものとなることを確認した。
 液状化までの体積ひずみによる液状化強度増加率を考慮した液状化判定法を用いて被災及び無被災堤防の液状化判定を行ったところ,FL値と被害の有無の関係が大幅に改善されたものとなった。

 


Pre-shearingが液状化強度に及ぼす影響

 大きな地震が発生すると緩い砂地盤は液状化する。地震の発生頻度を考えると,大きな地震が1度起こるには中地震が数回,小地震が数十回は発生する。このような多くの中小地震が地盤の液状化強度に与える影響を調べた。
 本研究では加振履歴や過圧密履歴,地震中の部分排水等により発生する微小な体積ひずみとせん断ひずみに着目し,それらが液状化強度の増加に及ぼす影響を繰返しせん断試験により系統的に調べ,履歴等を統一的に考慮できるモデルを構築するとともに,微視的粒子構造の影響を原位置で評価する指標を見出す。次に,遠心模型実験により,数百年間の地震履歴に相当する多くの中小地震履歴や過圧密履歴を与えた地盤や,地震中に体積変化が生じるよう透水係数を調整した地盤に対して大小の加振を繰返し行い,評価指標の妥当性を確認している。

 下図は,3種類の液状化試験の結果を示している。1つ(図中の破線)は中密の豊浦砂(事前加振無し)で2,3波目で液状化した。2つ目(図中の太線)は,予め小さな繰返し加振を排水状態で行い体積が0.1%減少した供試体,3つ目(図中の細線)は予め小さな繰り返し加振を排水状態で行い体積が0.3%減少した供試体である。予備加振を行った供試体は液状化強度が大幅に増加していることがわかる。ここで予備加振による体積ひずみは(0.1%,0.5%)は相対密度にすると0.4%,2%に対応するごくわずかなひずみである。

 
 
 
 左図は体積ひずみとそれによる液状化強度の増加率の関係であり,図中には不飽和供試体の非排水繰返しせん断中の体積ひずみと液状化強度の関係も示してある。ごく僅かな体積ひずみが液状化強度を2倍にも3倍にも増大させることがわかる。







2018年インドネシア・スラウェシ地震で発生した大規模液状化流動現象

 2018年9月にインドネシア・スラウェシ島で発生した地震により,パル市周辺部で極めて大規模な地盤流動が数か所で発生した。流動距離はこれまでの前例(数m)をはるかに超える1kmに及ぶ箇所もあり,2000人を超える多くの犠牲者がでた。
 本調査では,超大規模流動のメカニズムの解明に資することを目的に,現地での大規模トレンチ掘削を含む詳細な調査を行った。今後も採取した試料の室内試験や模型実験等を駆使し,この稀有な現象の解明を進めてゆく。





発表論文リスト

M. Okamura and S. Hayashi (2014): Damage to river levees by the 2011 Off the Pacific Coast Tohoku earthquake and prediction of liquefaction in levees, Geotechnics for Catastrophic Flooding Events – Iai (Ed) Taylor & Francis Group, ISBN 978-1-138-02709-1, pp. 57- 67

岡村未対,林秀太朗(2014):薄い砂層の液状化判定法に関する研究,第14回日本地震工学シンポジウム,pp.2427-2436.

Mitsu Okamura, Shuji Tamamura and Rikuto Yamamoto (2013): Seismic stability of embankment subjected to pre-deformation due to foundation consolidation. Soils and Foundations, Vol. 53, No. 1, pp. 11-22.

F. Nelson and M. Okamura (2017): Effects of the volumetric strain due to pre-shaking on liquefaction resistance, Proc. 16th World Conference on Earthquake, 16WCEE, paper No. 3073.

Mitsu Okamura, Fred Nelson and Shota Watanabe (2018): Pre-shaking effects on volumetric strain and cyclic strength of sand and comparison to unsaturated soils, International Journal of Soil Dynamics and Earthquake Engineering, Vol. 124, pp. 307-316, https://doi.org/10.1016/j.soildyn.2018.04.046

Nelson Fred and Mitsu Okamura (2019): Influence of strain histories on liquefaction resistance of sand, Soils and Foundations, Vol. 59, No. 5, pp.1481-1495. https://doi.org/10.1016/j.sandf.2019.06.011

Mitsu Okamura, Kohei Ono, Utari S. Minaka, Ardy Arsyad, Sukiman Nurdin (2020): Large scale flowslide in Sibalaya due to the 2018 Sulawesi Earthquake, Soils and Foundations, Vol.**, pp.**. Accepted 2020.03.27.