海岸工学研究室
 
教員名:日向 博文(教授),畑田 佳男(講師)
 
日向研究室紹介はこちら→ http://www.cee.ehime-u.ac.jp/~kaigan/hinata/ 
畑田研究室紹介はこちら→ http://www.cee.ehime-u.ac.jp/~kaigan/images/Hata.pdf 

●研究内容
 海岸工学研究室では、人々が安全で安心に暮らせる、また自然と共存できる社会の構築を目指して研究を行っています。主な研究内容は(1)海洋レーダと数値シミュレーションを用いた津波減災技術の開発、(2)海辺の構造物の脅威である高波の規模やその長期的な変化に関する研究、そして(3)海洋プラスチックによる海洋汚染に関する研究です。様々な研究テーマがありますが海洋物理や海岸工学の知識・技術を使いならが、また様々な研究機関や市民の方々と恊働しながら研究を進めています。これらの研究内容を以下にもう少し詳しく説明します.


●研究(1) 海洋レーダと数値モデルを用いた津波減災技術の開発(担当 日向)
 
○津波レーダの開発
    東北地方太平洋沖地震で発生した津波は約1,000km離れた紀伊水道内に伝搬しました。我々の研究グループ(愛大・関大・琉大・国交省・NICT・NJRC・国際航業)はその様子を和歌山市に設置した2台の海洋レーダでとらえる事に成功しました。また、津波によって発生した複雑な副振動のモードまで明らかにする事ができたのです。これら一連の成果は世界でも初めてのものであり、津波減災に対する海洋レーダの有効性を示すものとなりました。
    そこで、我々は現在、より遠くが見える(遠くで津波を計測できる)津波レーダを製作しています。これまでの断続的な電波照射方式から連続方式に変更したり、反射波から津波シグナルだけを精度良く取り出すアルゴリズムを開発したりしています。平時にもレーダは活躍します。レーダで広域の海流を観測し、海洋物理学の発展や水産業、航行安全に役立てる事が可能なのです。


海洋レーダ(右)とレーダがとらえた津波(第2波の押し波)(左;日向ら, 2012)


○海洋レーダを用いた津波初期水位分布の逆推定
    東北地方太平洋沖地震では広域被災状況の把握が遅れたために被害が拡大したのではないかと言われています。では、どのようにすれば素早く広域の被災状況を把握できるのでしょうか?一つの方法は、津波初期水位分布を短時間で正確に把握することです。ではなぜ初期水位分布が分かると被災状況の把握が可能なのでしょうか?それは、この水位分布を数値モデルの初期条件として利用し、津波伝播-浸水計算をすればよいからです。現在の我が国の数値モデルは非常に高精度なのです。
    そこで、津波レーダがとらえた面的な津波シグナル(津波の流速)から津波の初期水位分布を逆推定する手法を開発しています。精度良く推定するためのレーダの配置についてもあわせて検討しています。


仮想レーダによる初期水位分布の推定結果
(藤ら, 2013)


  
○研究内容(1)についての最近のテーマ
  ・FMCW方式を採用した遠距離津波レーダの開発(愛大・琉大・関大・NICT・NJRC)
  ・数値モデルとレーダ観測結果の統合に基づくバーチャル津波観測の実施
     (愛大・国総研・琉大・関大・国際航業)
  ・レーダ観測結果を利用した津波初期水位分布の逆推定(愛大・国総研・関大・国際航業)
  ・南海トラフ地震を想定した津波レーダ最適配置に関する研究(愛大・国総研・国際航業・関大)
      詳細はこちら→ http://www.cee.ehime-u.ac.jp/~kaigan/images/Tsunami.pdf 


●研究内容(2)高波の規模や長期的な変化に関する研究(担当 畑田)
 
○日本沿岸の波高の極値推定

 海岸海洋構造物を作るときには,これを壊す原因となる波の大きさ(問題になるのは波の高さ:波高,です)を適切に評価する必要があります.規模(何年に1度起こるものか)を小さく見積もれば安全性に問題が生じ,大きく見積もれば経済性に問題が生じます.一方,波の規模を推定する根拠となる観測資料は必要な場所で得られているとは限らず,その期間も充分とはいえません. そこで風が吹いて波が成長し,海底地形の変化の影響を受けて波高や進む向きが変化する仕組みをモデル化した波浪推算モデルに風を入力して長期間の高波を求め,これから波の規模を推定する方法を開発し,日本周辺で見積もっています.風と水深が与えられれば,世界中のどこでも推定可能です.図は模擬台風に基づいて推定した千年間の台風時の風を波浪推算モデルに入力して求めた,台風によって千年に一度起こる波高です.


図 千年に一度起こる波高


○波高の長期的な変化の評価
 最近,地球温暖化といった長期的な気候変化に伴って波高も大きくなっているのではないかという話しがあります.1年に1cm大きくなるとしても100年経てば1m大きくなりますので,上の波高の極値推定法で波の規模を見積もったとしても,100年後には怪しくなります.  そこで資料が得られる過去50年程度の風を波浪推算モデルに入力して波高を推定し,この期間に波高の長期的な変化が見られるかどうかを調べます.図は沖合地点における過去41年間の計算結果に基づいて推定した日本付近における1年あたりの波高の増加率を表しています.波高は東方沖合で増加する傾向を示しますが,今のところ日本沿岸では増加傾向をもたないようです.


図 波高の長期的な増加率


○研究内容(2)についての最近のテーマ
  ・観測資料および推算資料に基づく伊勢湾の風候および波候の解析
  ・日本沿岸における波候の経年変動および傾向変動に関する研究
  ・瀬戸内海における台風時波高の極値の推定に関する研究
  ・確率的台風モデルを用いた波高の極値推定システムの相互比較



●研究(3) プラスチックによる海洋汚染に関する研究(担当 日向)
 
○海岸滞留時間モデルの開発
    河川などを通じて海洋に流入したプラスチックはどのような運命をたどるのでしょうか?多くのプラスチックは海岸への漂着・沖合への再漂流を繰り返しながら海洋表層を漂っていると考えられています。プラスチックのうちでも生産量の多いPEやPPは海水よりも軽いのです。もちろん国境なんて関係ありません。
    プラスチックは紫外線や熱で性状が劣化し、やがては海洋生物が体内に取り込めるサイズにまで壊れていきます。マイクロプラスチックです。厄介なのは海外から漂着しているある種の漁業用ブイの様に、その製造過程で生態系に影響を与える化学物質が添加されているものがあるのです。マイクロプラスチック生産のホットスポット、それは海岸です。世界中の海岸にどれだけの量のプラスチックが”どれだけの時間”存在しているのか、これを明らかにすることが将来影響を予測する上で非常に重要なのです。そのために我々はプラスチック漂着物の海岸滞留時間モデルを開発しています。


離島に漂着した大量のプラスチック(左)、指数関数的減少から滞留時間(209日)を計算
(右; Kataoka et al.,2013)

 
○漂着プラスチック定量化技術の開発
    こちらの研究は”どれだけの量”のプラスチックが存在するのか、をターゲットにした研究です。水温を計測するには水温計、流速を計測するには流速計を設置すれば値は得られます。でも残念ながら漂着プラスチック計は存在しません。調べたいモノを定量化することが研究のスタート地点です。人手にばかり頼っていては、多地点で連続的なデータを得る事はできません。そこで、我々は漂着プラスチックの被覆面積を海岸の撮影画像(可視カメラや近赤外カメラを使用)から求める技術を開発することろから始めています。


海岸を撮影した可視画像(左)から漂着プラスチックだけを抽出(右; Kataoka et al., 2012)


○研究内容(3)についての最近のテーマ
  ・波浪統計量に基づく海岸滞留時間モデルの開発(愛大・国総研)
  ・複数海岸(瀬戸内海〜伊豆七島)での滞留時間比較実験(愛大・国総研)
  ・北米・ハワイ海岸を対象としたウェブカメラによる3.11津波起因漂流物のモニタリング
    (愛大・国総研・九大・鹿大・JEAN)
  ・近赤外線を用いたプラスチック抽出技術の開発(愛大・国総研)
      詳細はこちら→ http://www.cee.ehime-u.ac.jp/~kaigan/images/marine_litter.pdf