研究紹介

研究概要

建設材料開発学研究室では,土木構造物の主材料であるコンクリートの諸性質や設計法施工法について開発研究を行っています. さらに,コンクリート構造物の非破壊検査法の開発,フライアッシュなどの産業廃棄物のコンクリートへ適用したときの, パフォーマンス評価なども行っています.

研究テーマ

フライアッシュコンクリートの強度・耐久性能に関する研究

我が国では,石炭火力発電が発電電力量のおよそ20%を占めており、石炭燃焼が 地球環境に与える影響は無視できるほど小さくはないものの、 豊富な資源量からその使用は今後も継続されると考えらます.また,原子力エネルギーによる発電がほとんど望めない現状においては,石炭火力発電依存傾向が 依然として継続されると予想され,今後莫大に算出されると思われる発電のゴミ=石炭灰を有効に消費できる方法が望まれています。

その一手法として、石炭灰の大部分を占めるフライアッシュをコンクリート混和材として 利用するものが古くから提案されています.フライアッシュの混和は、フレッシュ性状の改善や アルカリ骨材反応の抑制効果、塩分遮蔽性能の向上などの利点があるものの、 鉄筋腐食の原因となる、中性化の進行の促進や,早期強度の低さなどの欠点も有します. 本研究では、フライアッシュコンクリートの低い早期強度の予測手法, 改善手法、中性化や塩分遮蔽に関する耐久性能の定量化を目指しています。

フライアッシュコンクリートの強度改善について(英語論文) >> PDF1

中 性化・塩化物イオン拡散(日本語・ppt) >>PDF2

不飽和フロントからの塩化物イオン拡散>>PDF3

研究テーマ

構造物の非破壊検査手法の開発

構造物に使用されるコンクリートは、適切な配合および養生条件のもとに作製されると、 極めて耐久的な工業製品となりうるが、反対に,不適切な配合、 早期脱型にともなう不十分な養生条件下でつくられたコンクリートは、力学的,耐久的に 極めて脆弱な性質を呈するといった特徴を有する。充填不良などを除き、 不健全であるコンクリートは、一旦硬化すると、健全なコンクリートと比較しても、 見た目においておよそ違いがみられないために、鉄筋腐食によるひび割れ発生まで劣化が 顕在化しないという問題がある。本研究では,コンクリートの密実性に大きく関与する、 コンクリートの透気係数に着目し、見た目では判断しづらいコンクリートの健全性の 定量評価を行なうことを目標としている。

我が研究室では,シールによる気密処理により透気領域を明確化することにより,現場コンクリート空気透過性の絶対指標である透気係数を同定することに成功 した(左図参照).また,吸引口の削孔により,深さ方向への品質を同定する手法を提案している(右図参照).

シール法,シール削孔法の理論に関する資料<<PDF1
シール部材の検討に関する資料<<PDF2
削孔法による差分透気係数で表層から深部に至る透気係数を求める方法<<PDF3


図 シール法の概要

図  シール削孔法による透気係数分布の推定

研究テーマ

微生物代謝・生体代謝反応を利用したひび割れ補修グラウトの開発

コンクリート中のひび割れの存在は,鉄筋腐食リスクを高めるため,早い段階で,ひび割れ中を何かで埋める必要がある. 本研究では,微生物代謝もしくは生体代謝反応により生成される炭酸カルシウムにより充填させることを目的としている.水ベースのグラウトであるため,充填 性に優れ,かつ施工中の汚臭がなく,カルシウム=シリケート硬化体であるコンクリートのひび割れを,炭酸カルシウムで補修するため,母材と補修材料との付 着も極めて良好である.

参考文献>>PDF


図 補修の様子(上から0回注入,1回注入,2回注入,3回注入,4回注入)

研究テーマ

損傷を受けた硬化体の流体の移流特性に関する研究

乾燥収縮や様々な荷重を受ける鉄筋コンクリート構造においては、 ひび割れ発生は避けることの出来ない事象である。ひび割れの発生は、 コンクリートの構造性能を著しく低下させる,鉄筋腐食現象の要因となる。 鉄筋腐食は適度な量の液状水と酸素の存在が原因となるゆえに、 ひび割れを有するコンクリートでの、これらの物質移動現象を定量化することは、 コンクリート構造の劣化挙動を追跡する意味で極めて重要である。 本研究では、単一亀裂における物質移動現象の解明、乾燥収縮による 複数の内部微小亀裂の影響を含んだ、硬化体のマクロな気体透過性を 明らかにすることに主眼を置いている.
関連論文>>PDF,相似実験により ひび割れ中の水の挙動を見ています)


図 ひび割れ中を流れる流体の速度分布(数値解析)
※ひび割れ幅が大きくなると,必ずしもひび割れの曲がりに沿った流れは達成されなくなる

研究テーマ

様々なスケールの流れ場における水のふるまいの解明

セメント硬化体は、ナノ~マイクロサイズの空隙からなる多孔体であるとともに、ミリ-センチメートルサイズのひび割れの存在をある程度は許容しており、様々なスケールの空隙を有する特徴的な材料である。セメント硬化体における水は、セメントの水和反応、有害物質の運搬、その拡散場の提供など、その存在は大きな意味をもつ。本研究では、様々なスケールにおける水のふるまいを、比較的大きなスケールにおいては実験的に、小さなスケールにおいては数値実験的に明らかにする.

  分子シミュレーションに関する数値実験 >>PDF
  飽和透水モデルに関して >>PDF
  不飽和透水モデルに関して >>PDF


図 分子シミュレーションによる微小空隙での水の振る舞い再現
(アニメーションには東京大学丸山研究室開発のソフトウェアを使用)

研究テーマ

非破壊によるコンクリートの塩化物イオン濃度測定・配合推定手法の開発 =即発γ線による達成=

即発γ線の利用により,コンクリートを破壊することなく,コンクリート深部までの情報を取得する手法を提案する. 標的に熱中性種を当てることにより,標的の各種が励起状態となり,即発γ線を放射する.この即発γ線のエネル ギー値とカウント数を検出器により取得する  (図1).元素は固有のγ線エネルギーを有することから,γ線エネルギーのカウント数から,元素含有量に関する の定性分析が可能である(図2).

塩化物イオン濃度測定では,内部標準にCaを選択することにより,Cl/Caから単位カルシウム量あたりのCl量が測定可能である. また,検量線を事前に取得しておくことで,セメント重量あたりのCl量が測定できるのである. 炭酸化の影響を考慮して,表層から10mm程度に塩化物濃度のピークがある場合であっても,精度よく推定できている(図3).

  参考資料1(日本語) << PDF
  参考資料2(英語)   << PDF

配合推定については,セメントに対してCa,骨材に対しては,セメント由来分を除去したSi量を標準とすることにより,水セメント比を推定している.
水量指数法(鉄道総研法)と比較すると,同程度に,非常に精度良く推定できている(図4).

   参考資料3 << PDF


図1 即発γ線による物質検出の原理

図2 γ線スペクトルとカウント数の関係

図3  塩化物イオン濃度分布推定結果

図4 水セメント比分布推定結果

最近の研究テーマ

  • セメント硬化体中の流体移動解析のためのイメージベースドモデリング
  • 非破壊透気試験中の圧力分布の実験的測定
  • 内部ひび割れ(Goto Crack)の非破壊による検出

研究室の主な備品

  • 3000kN,300kN万能試験機
  • 150kN油圧サーボ式疲労試験機
  • 透気・透水試験機
  • コンクリート破断面形状計測装置
  • 高温・高圧三軸透水試験装置
  • 熱サイクル試験装置