過去に経験したことのない甚大な災害に遭遇したとき，私たちはとめどなく深い混乱とその後の生活再建において大きな困難に直面することになります。それは，科学における過去の自然ハザードに基づく予測を超越する事象が発生することの不確定性，行政における災害規模の想定を大きく超えた中での対応の限界，そして何よりも住民のみなさんの人生に突然におとずれた不幸と非日常の困惑の中で，失われた生活・社会環境の復興に取り組むことの難しさです。そのため，その日がいつの時点で訪れようと，それがどのような規模であろうと，迅速性と即効性をもって復興までの取り組みに対処するために，事前に考え備えておくことが「事前復興」という概念です。その取り組みは，大きくは次の２つの検討よりなります。

・地域の状況に応じて，生活再建や市街地復興状況をあらかじめ想定し，起こりうる問題を事前に把握することで，復興を事前に準備すること
・災害が発生した際のことを想定し，被害の最小化につながる避難ネットワーク計画や，復旧・復興に向けた地域づくりと都市計画を推進し，そのための体制を整えておくこと